FPコラム【伊藤潤平 第16回】
ファイナンシャルプランナーによる金融商品に関するコラムです。
【伊藤潤平 第16回】ファンド体験談Ⅱ-④
◆IT企業に勤めるAさん31歳の話◆
※第3回は、こちらから読めます。
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★☆★☆★☆★☆★☆★☆≪配当が遅れ始めた≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆
Aさんはゴールデンウィークを存分に遊んで過ごしました。(あー、仕事に戻るのかぁ。もう十分儲かってるから仕事やめようかな。)そう思い始めた休み明けの日の仕事中に、ファンドを紹介してくれた友人から連絡がありました。
「ファンドから連絡があって、銀行からお金が引き出せなくて配当が滞っているんだって」
Aさんは少し驚き自分の銀行口座を確認したものの、やはり配当は振込まれていませんでした。(何かあったんじゃないだろうか、本当に何も問題ないのかな。)何か嫌な予感がして、自分より先に投資を始めていた人達に電話をかけました。片っ端から話を聞いて回ったものの、新しい情報は得られませんでした。そして、Aさんは一日中不安な気持ちのまま仕事を終えて帰宅しました。疲れ果ててベットに横たわっていると、再び友人から連絡がありました。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆≪最悪の結果≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「言いづらいんだけど・・」
「何?」
「どうやら元本を割り込んでいて、もう配当は出せないんだって」
「えっ!何でだよ!!元本を割る前に運用ストップするって言ってたじゃん」
「そうなんだけど・・かなり資金が減っているらしいんだよ」
「・・・」
残った資金は何割かあるものの、全部戻ってくるかわからないとのことでした。Aさんはどん底に突き落とされたような感覚を覚えました。あまりのショックにそのまま寝込んでしまい、次の日の会社も休んでしまいました。(何でこんなことになるんだろう・・・)自分が投資を始めた頃から今までのたくさんの出来事が、頭の中を駆け巡ってきました。
自分にファンドを紹介してきた友人を思い浮かべ、少し憎むこともありました。自分が営業をして投資してくれた人達を思い浮かべ、申し訳ないと思う気持ちも沸いてきました。ファンドへ投資した他の仲間達と異変に気づかずに楽しそうに笑っている光景を思い浮かべ、惨めな気持ちになりました。しかしどんなに不条理であっても、自分が取って判断した行動には違いない、と感じざるを得ないのでした。そしてそれは他の多くの投資家達も同じでした。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆≪後悔した内容≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆
(今思えば、おかしいと思うこともいくつかあったな。それに何で気づかなかったんだろう。)後で知ったこととして、途中まで利益を出し続けてきちんと運営していたものの突然運用がうまくいかなくなり、社長がやめようと思ったところを詐欺集団に誘導されて、配当と募集はそのまま続けて元本を割り続けたままファンドを存続させていったのでした。
数ヵ月後にファンド側から報告があり、謝罪とお詫びに加えて今後の返済計画が示されました。損失を与えた分に関して、別の事業で利益を出して返すように努力をするとのことでした。その後数年間かけて返済が行われ、Aさんはファンド投資のリスクについて身をもって気づかされました。