~はじめに~
平成27年1月より相続税の改正が実施されました。今回の改正は、主に基礎控除が4割下がるという内容です。この改正により国税庁は、改正後の平成27年度における課税対象者は前年の平成26年度と比べ1・8倍になり、課税割合は現行の課税方式となった昭和33年以降で過去最高を記録したと発表しました。
相続税が改正されるということで、多くの人が相続税対策に取り組みました。特に、相続税対策の王道であるアパートなどに代表される貸家の建築は、ブームを迎えています。本書執筆時(平成29年5月)においても、貸家の建築が急増したことにより、不動産や金融マーケットに大きな変化が表れ始めたのです。
新聞紙面や雑誌・テレビ報道でも盛んに取り上げられているためご存知の人も多いと思いますが、相続税対策により貸家建築は右肩上がりの状態、そんな貸家に対する融資額も右肩上がりで、あのバブル期の融資額を超えました。しかし、貸家の建築はあくまで相続税対策のためです。
地域によっては、増えた貸家に対し入居者の総数が増えていないため、入居実態を伴わない貸家の建設は、バブルのような状態になりつつあります。そんな現状に、金融庁は金融機関に対し、1つ1つの融資案件が、本当に相続税対策になっているのかを検査・監督していくという方針を示しているのです。
このことから、相続税対策の王道とされていた自分が所有する土地にアパートを建築する手法は、有効な相続税対策にならなくなり、悩みを抱いている人も増えてきました。しかし、アパートが相続税対策にならなくなったとしても、相続税対策自体をしないわけにもいきません。本書では、そういった悩みを抱えている人に対し、「生前贈与」と「都心の築浅中古ワンルームマンション」を活用した相続税対策の手法を紹介します。
もはや、国民的な関心ごとになりつつある相続ですが、一般的に相続税対策は難解なテーマとして捉えられています。なぜなら、人生のうちに相続を何回も経験する人は、少ないからです。
経験が少ないが故に、「相続」が「争族」に発展しているケースが増えていることも、見逃してはいけません。相続でもめているのは富裕層であると考えられがちですが、実際の遺産トラブルは「5000万円以下」の案件が約75%と、むしろ一般家庭にこそ起こり得るトラブルと言っても過言ではないのです。
これは、富裕層はあらかじめ起こる相続に対して準備しているのに対し、うちには関係ないと思って準備していない家庭だからこそ起こる問題とも言えます。
相続税対策は、相続税評価額を下げることだけが、対策のすべてではありません。相続税評価額を下げつつ、「相続」が「争族」にならないように対策する必要もあります。その両方を実現しやすい方法として、都心の築浅中古ワンルームマンションを活用した相続税対策が有効だと言えるのです。
私は、相続税対策をする人が、相続税の仕組みのすべてを理解する必要はないと考えています。相続税の「知識」ではなく、相続税評価額を下げつつ争族を防ぐやり方である「知恵」を理解する方が有効な手段ではないでしょうか。
本書では、相続税対策初心者のために、相続税の仕組みではなく、効果的な相続税対策とは何かという具体的な「知恵」を提案していきたいと考えています。私が持っている「知恵」が一つでも多くの家庭において、お役に立てるよう書き進めて参りますので、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
2017年5月吉日
株式会社和不動産代表取締役 仲宗根和徳
目次
- 第1章 相続税改正と相続税対策における不動産の優位性
- 平成27年1月の相続税改正 ―「相続」の本当の目的とは―
- もはや富裕層だけじゃない、増加する課税対象者
- 相続税の課税対象となる財産はどのようなものがあるか?
- 重く相続税がのしかかるのは2次相続時
- 評価額の計算式で分かる「貸家」が相続税対策に有利である理由
- 「理想の相続税対策」実現のステップとは?
- 第2章 キーワードは「生前贈与」。相続税対策は評価額を下げ、早めに始める
- 相続税評価額の下げ方とシミュレーション
- 「増税」の相続税と、「減税」の贈与税
- 相続税対策を成功させたいなら
- 「相続時精算課税制度」と「暦年贈与」を賢く利用する
- 借り入れを利用する相続税対策のデメリット
- 第3章 比較で学ぶやってはいけない相続税対策
- 「やりすぎ」相続税対策で引き起こされるトラブル
- 相続税評価額を下げることだけを考えるから、相続税対策は失敗する
- アパートとワンルームマンションの比較で理解する
- 後悔しない相続税対策のポイントとは?
- 相続税対策に適していない物件とそのリスクとは?
- 第4章 都心の築浅中古ワンルームマンションが相続税対策に向いている理由
- ここまでのまとめ
- 「生前贈与×都心の築浅中古ワンルームマンション」で効果的な相続税対策を
- ワンルームマンションだから効果を最大限に発揮できる「相続時精算課税制度」の活用
- 生前贈与最大のメリット「暦年贈与」(110万円の基礎控除による非課税枠)とは?
- 資産管理会社を活用することの4つのメリット
- 平成29年の税制改正大綱で、流行りの相続税対策についにメスが入る!?
- 老後の生活を豊かにするワンルームマンションからの家賃収入
- 第5章 家族を思いやることが円満相続の第一歩
- 受け取った人が資産をうまく活用できることが重要!
- ドロ沼「争族」を回避するための3つの知恵
- いざという時に、かかりつけの相談相手を持つ! 専門家の活用
- 相続を円滑に進める仕組み「個人信託」をうまく活用しよう
- あとがき
株式会社和不動産 代表取締役 仲宗根 和徳
2011年 株式会社和不動産代表取締役就任
電話営業等のプッシュ型営業を一切行わない営業手法と、きめ細やかなアフターフォローで、多くの顧客から支持を集めている。「人が集まる会社」をコンセプトに、いつでも聞きたいことが聞ける不動産会社を目指し、①【不動産投資の理解を深めるゲームを取り入れたセミナーなどを年間100回開催】 ②【アフターフォロー専門部門を設置し、購入後から3ヶ月に1度のアフターフォロー】 ③【お花見やクリスマスパーティーなど、オーナー同士が交流できるイベントの開催】を実施するなど、従来の不動産業界とは一線を画した経営を行う。
その取り組みは、④テレビ、新聞、雑誌など多くのメディアに取り上げられ、高い評価を得ている。
著書として『不動産投資の裏側(ブラックボックス)を見抜き、堅実に稼ぐ方法』 『不動産投資購入後の教科書』(クロスメディア・パブリッシング)『老後破産を防ぐ「都心・中古ワンルームマンション経営』(幻冬舎)がある。