不動産投資コラム(32)
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不動産投資に関するコラムをご紹介いたします。
第32回【節税法を抑えて不動産投資を成功に導こう】
不動産投資の成功の成否は節税にかかっている
不動産投資でしっかりとした収入を確保するためには、節税の方法を知っておくことが大切です。
もちろん管理にかかる諸費用などの経費を減らすことも大切ですが、不動産投資の利益は最終的に税金となって徴収されるため、いかに税金対策を念頭に不動産投資を行えるかが、成功の分かれ目になってくるのです。
実際の不動産投資において、キャッシュフローにおける「現金収入」と「税務上の収入」では、計算方法が異なるため、税金対策としての節税方法を理解しておくことが大切です。
不動産投資においては、家賃などから得た収入から経費と控除分を引いた収益に、該当する税率をかけた分が税金となります。
そのため、いかに経費にできる項目をモレなく計上するか、青色申告などの方法によって控除項目を増やすか、所得分散し低い税率を狙っていくか、などを検討していく必要があります。
ただし、節税ばかりに気をとられると利益が少なくなってしまい、次の投資の際には、金融機関から融資を渋られる可能性も出てきますので、やりすぎには注意するようにしましょう。
今回は、このような不動産投資を成功に導くための節税方法についてご紹介していきます。
家賃収入は税金対策をしてこそ手取り収入が増える
不動産投資の目的は収入を増やすこと。そのため、不動産投資を成功に導くためには、最終的に手元に残る現金をいかに増やすかを考える必要があります。
通常、不動産投資の利益を増やしたいと思った場合には、経費を減らすことだけに目がいきがちですが、実際は残った利益に対して税金が徴収されるため、この最終的な税金のことまでを念頭に、しっかりと対策を立てておくことが必要です。
税金は通常、「(収入-経費-控除)×税率」によって、徴収される税金の額が算出されます。
「収入」とは不動産投資における家賃収入そのもので、「経費」は不動産投資を行い収入を得るために必要になった金額です。
「控除」は、ある一定の条件を満たせば所得の金額を引くことができる金額で、ここで残った課税所得金額から税率をかけると税金の金額が判明します。
そのため、手元に残る最終的な現金を増やすためには、この式の中の「収入」を減らすか、「経費」を増やすか、「控除」を増やすか、「税率」を減らすか、の4つの方法を考えていく必要があるということになります。
ただし、ここで覚えておきたい点としては、現金のキャッシュフローと税務上の計算が異なる点です。
「経費」における借入金の返済分の「元本」は経費として認められず、借入金の中でも「利息」の部分だけが経費として認められます。
また、不動産投資を行う上で購入した土地と建物の代金においては、「建物の代金のみ」が経費として認められます。
その際、建物の代金を経費にする場合は、建物の耐用年数を建物の購入金額で割り、「減価償却費」として毎年の経費にすることが可能になります。
そのため、キャッシュフロー上では毎年、借入金返済の「元本」分を現金で支払いますが、税務上では経費として計上できません。
その反対に、不動産投資の運用2年目以降でも、初年度に支払った建物の購入代金を「減価償却費」として毎年経費に計上することができるのです。
このような計算上の2つの違いによって、実際に入ってくる現金と税務上の数字が異なるため、節税のためには、税務上の利益を少なく見せるようにすることが大切なポイントになってきます。
経費を増やすための節税方法
では、ここからは実際の節税方法についてご紹介していきましょう。
まず、税金を算出する式「(収入-経費-控除)×税率」において「収入、経費、控除」の合計が低くなればなるだけ、税率をかけた後の金額も少なくなるため、これらの項目をどう処理していくかを考えていくことが大切になります。
まず「収入」においては、家賃収入を減らしても、その分の入ってくる収入も減ってしまうため、節税の意味がありません。
そのため、まずは「経費」について考えていくことになります。
節税のためにまずできることは、いかにして「経費を増やせるか」ということを考えるようにしましょう。
経費を増やすためにできることは、「支出の中で経費分をもれなく計上すること」です。
不動産における固定資産税や金利などはもちろん、運用にかかわる「水道光熱費」や「管理費」などの金額もきちんと経費に計上することが大切になります。
また、経費は「収入を得るために使ったお金」なので、ついつい忘れがちな不動産の視察のための「交通費」「宿泊費」や、不動産投資を行うために購入した「書籍」や参加した「セミナー」、専門家へ相談した際の「飲食代(接待交際費)」なども経費として含めておく必要があります。
そのほかにも、自宅の一部を不動産投資における事務所として使用している場合は、使用している部分を敷地面積の割合で割った分を経費として算出することができます。
また、自家用車においても、不動産投資のために使用した割合だけ、ガソリンや車検、駐車場、自動車保険の金額を経費にすることも可能です。
新幹線や飛行機などを使ってどこか別の場所に行った場合も、不動産投資における収入を得るための出費であるならば、いずれも経費として扱うことができます。
このような、自宅などのように毎月出費するようなものは、年間の合計金額に換算すれば大きな金額になることがわかるかと思います。
これらの項目と金額は、実際の税務調査時にもきちんと理由を説明できるようにするため、メールやパンフレット、何の目的であったかなどの証拠を残しておくようにしましょう。
ただし、「経費を増やすこと」ばかりに注力することには注意が必要です。 例えば経費を増やそうと無駄なものを10万円買ったとしても、税率を30%と想定した場合、税金が3万円ほど安くなっただけで、残り7万円は現金で支出しているため、結局は収入減となっています。 そのため、今現在支出しているものにモレがないように経費を計上することが大切になっていきます。
控除を増やすための節税方法
続いての節税方法としては「控除を増やす」というものです。
控除を増やすことは、節税において、数百万円の節税を期待できる方法ではありませんが、特に現金の支出は関係なく節税を行えますので、とても有効的な方法となります。
簡単なものでは「医療費控除」や「扶養控除」といったものがあり、こちらも経費と同様、モレがないように計上することがポイントとなります。
最も基本的な控除の方法は、「青色申告」による方法です。
年に一度、「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告特別控除が適用となり、10万円または65万円の控除を受けることができます。
個人でも、その年の赤字を翌年以降に繰り越したり、給与所得など他の所得と相殺でき、10万円の特別控除を受けることができます。
また、事業規模の賃貸(5棟10室以上の賃貸)を行っている場合は、複式簿記による帳簿の作成にて65万円の控除を受けることができます。
控除は、不動産投資によって利益が出ていることが前提となりますが、年間に数十万の経費を計上できると考えれば節税効果としては大きなものになります。
仮に所得税・住民税を20%だとしても65万円×20%=13万円の税金が浮くため、やらない手はありません。「青色申告」は不動産投資における基本的な節税方法になります。
その他にも、控除を増やす方法としては「小規模企業共済等掛金控除」というものがあります。
「小規模企業共済」とは、小規模企業の個人事業主や会社の役員などが、第一線を退いたときに積み立ておいた掛金に応じた共済金を受け取れるものです。
言わば「経営者の退職金制度」と呼ばれるものですが、この「小規模企業共済」の掛金は「全額が控除になる」という特徴があります。
そのため、運用益などには期待せずとも、日々の節税効果として加入することには大きなメリットがあるということになります。
その分の現金は支出してしまいますが、控除を増やす節税方法としては有効な方法です。
税率を下げるための節税方法
節税方法としての最後は、「(収入-経費-控除)×税率」の計算式における税率を下げるための方法をご紹介します。
基本的に税率は、「超過累進課税」によって所得が高い人ほど多くの税金が取られることになりますので、税率を下げるために大切なことは「所得を分散すること」になります。
具体的な方法としては「青色事業専従者給与」を利用するやり方です。
不動産投資として個人で事業規模(10室以上の賃貸)を行っている場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することによって、配偶者に給与やボーナスを支払うことができるようになります。
これによって、不動産投資による所得を配偶者に分散することで、税率を下げることができるのです。
例えば、配偶者などに投資の相談や掃除、帳簿の作成などを行ってもらっている場合は、給与を支払い、その金額を経費扱いにすることで税率を下げることが可能になります。
ただし、この「青色事業専従者給与」を行った場合は、「配偶者控除」を受けられなくなることや、金額によって支給された人は社会保険の扶養から外れ、国民健康保険、国民年金の支払いを行う必要が発生してしまうこともありますので、注意しておきましょう。
またその他にも、収入が少ない方が不動産投資を行う、という方法もあります。
配偶者など所得が低い方が不動産投資を行うことによって、低い税率にすることができ、節税効果を得ることができます。
ただしこちらも、金額によっては社会保険の扶養から外れることや、そもそも融資が受けられないといったこともありますので注意しておきましょう。
節税対策と融資対策は正反対であることを忘れずに
このような節税対策を行う場合には、「節税対策と融資対策は相反してしまう」ということを忘れずに覚えておいてください。
経費などをモレなく算出することで節税対策にはなりますが、その分最終的な所得金額の値は減ることになります。
すると金融機関からすると、「あまり利益が出ていない」と見られてしまうため「お金を貸したくない人」と思われてしまう可能性もあるのです。
そのため、今後も融資を受けて不動産投資を拡大していこうと考えている場合には、しっかりと利益を出してお金を残すようにすることも大切です。
また逆に、不動産投資の拡大はあまり考えていない場合に、経費を抑えて手元に多くの現金を残した場合では、税金で大きく引かれてしまいますので、可能な限り節税を行うことで税金を少なくすると良いでしょう。