FPコラム【山本俊成 第11回】
ファイナンシャルプランナーによる金融商品に関するコラムです。
【山本俊成 第11回】不動産投資が注目されている背景
今回は、不動産投資が注目されている背景について触れていくことにします。
(1)資産運用を真剣に考えなければいけない時代に
現行の日本の公的年金制度や医療保険制度は、機能不全に陥っているといえます。世代間扶養の考え方に基づき制度設計がなされている為、少子高齢化等を背景とした人口構成の変化に対応するのが困難だからです。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆≪年金は23万?≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
現状の公的年金の受給額は、平成24年度の厚生労働省の報道発表資料によると、「夫が40年フルタイムで就労、妻が専業主婦」といった前提の場合、夫婦合わせて月額約23万円とのことです。
一方、老後を夫婦2人で暮らしていく上で必要と考える費用は、平成22年度の生命保険文化センターによると、ゆとりある生活を送るためには月額約36万円必要というアンケート結果が出ています。もちろん、老後を「どこ」で「誰」と「どのように」過ごすのか、目指すライフスタイルによって必要になる金額はもちろん変わってきます。ただ、公的年金だけに頼っていては、老後を豊かに暮らすのは難しいとはいえるでしょう。
長寿化という問題(!?)もあります。厚生労働省の簡易生命表(平成23年)によると、60歳の男性はそこから平均で約22年、女性は28年生きるというデータがあります。仮に60歳で退職し、毎月の生活費を40万円とすると22年間で、1億円を超えるお金が必要になります。それに対して、公的年金や会社からの企業年金・退職金を差し引いた部分を自助努力で賄う必要があります。ほとんどの人にとって一朝一夕に準備できるような金額とはならないでしょう。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆≪貯金だけでは・・・≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
単に貯蓄するだけで準備するのは現実的に厳しいといえます。例えば、30歳の人が、60歳迄の30年間で、3,000万円貯めようと考えたとします。タンス預金の場合、年間100万円(月額約8.3万円)積み立てる必要があります。年率1%で30年間運用するという前提の場合では月額72,500円となります。これはあくまで「老後に向けて」という話です。
(2)資産運用の一手段として注目を集める不動産投資
日本人の場合、将来得られるかどうかわからないキャピタルゲイン(売却などによる値上がり益)よりも少しでもインカムゲイン(配当・利息などによる現金収入)を得ておいた方が良いと考える人が多いように思います。
バブル崩壊前は、高い経済成長等を背景にキャピタルゲイン(値上がり益)が期待できましたが、1990年代以降の日本ではそれが微妙になりました。一方、不動産が生み出すキャッシュフローを重視する傾向が強まりました。上手に不動産投資を行えば、「継続的、かつ安定的な収入が得られる」という見方が定着しつつあります。特にロバート・キヨサキ氏の「金持ち父さん 貧乏父さん」の出版以降、収益不動産への投資に注目が高まったのは、誰もが認めるところかと思います。
将来の収入の見通しが不透明といえる今の日本のような環境においては、「不労所得」が得られることは非常に魅力的といえます。収益不動産への投資は、その一手段となり得るものといえます。
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