FPコラム【山本俊成 第16回】
ファイナンシャルプランナーによる金融商品に関するコラムです。
【山本俊成 第16回】不動産投資の判断基準①~単年度の利回りの考え方~
◆不動産投資の判断基準『利回り』◆
資産運用や投資の収益性は、「利回り」(投資元本に対して1年間に何%の収益を生み出すか)によって評価するのが一般的となっています。不動産投資についても、ひとつの判断基準として、「利回り」の考え方について押さえておく必要があります。今回は、「単年度」を基準にした場合の利回りついて見ていくことにします。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆≪表面利回り≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆
表面利回り」とは、不動産の購入価格(物件の取得価額)に対する年間収入(家賃収入等)の割合のことをいいます。広告等には、この「表面利回り」で表示されていることが多いようです。投資の収益性を“大まかにとらえる”には適していますが、不動産賃貸事業を運営することに伴う諸経費(後述)を考慮していない点には留意する必要があります。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆≪NOI利回り(実質利回り)≫★☆★☆★☆★☆★☆
「NOI利回り」は、(1)の表面利回りよりも“実質的な”利回りとして用いられます。総合還元利回りでは、算出するための分子に該当する部分に、表面利回りの年間収入(家賃収入等)ではなく、「純営業収益(NOI=Net Operating Income)」を用います。純営業収益(NOI)とは、年間収入から不動産賃貸事業を運営することに伴い発生する「管理費、維持修繕費、固定資産税・都市計画税、火災保険料等の諸経費(運営費)を差し引いた利益のことです。「ローンの利息」については、前提となる事業の資金計画によって、その金額が異なるため、上記の諸経費には含めません。
諸経費(運営費)は、建物の築年数やエレベーターの有無などの前提によって変わりますが、ワンルームマンションのような区分所有の物件で、家賃収入の20~25%程度となります。
一方、分母に該当する部分には、初期投資額(総投資額)を用います。物件の取得価額の他に、物件取得に係る費用(不動産取得税、登録免許税、司法書士に対する報酬、不動産会社に対する仲介手数料等)を加算します。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆≪どちらが正確?≫★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
NOI利回りの方が、表面利回りに比べ、不動産投資の正確な収益力を見ることができるので、より“現実的”といえます。ただ、あくまである一時点(=単年度)での利回りであるということには注意が必要です。次回は、「一定の投資期間」を基準にした場合の指標について見ていくことにします。