FPコラム
ファイナンシャルプランナーによる金融商品に関するコラムです。
【山本俊成 第52回】住宅を買い替えた場合の減税 売却で損をした場合
売却で損をした場合
過去2回のコラムでは、マイホームを買い替えて、旧マイホームの売却で利益が出た場合の税の優遇についてまとめました。今回は売却時に損が出た場合の税の優遇(居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除)について解説します。
■自宅売却時に損をした場合、所得税、住民税の節税になる
買い替えを前提に旧マイホームを売却した時、買ったときより値下がりして損失が発生した場合には、売った年の所得(給与所得など)と損失を相殺することができます(損益通算)。所得税と住民税の節税になるので、売却損が出る買い替えをしなければならない際には使いたい制度です。
1年で全ての損を差し引き切れない場合、翌年から最長3年間にわたり繰り越して、税金計算時に損失を引くことができます。つまり、4年間の課税所得金額の合計より、マイホーム売却時の損失額のほうが大きければ、その間は所得税、住民税がゼロになります。
この特例を使うには売却した旧マイホームについて売却した年の1月1日現在で所有期間が5年超であること、買い替え先の住宅を取得した年の12月31日時点で、その住宅用に返済期間10年以上の住宅ローンを借りていること、といった条件があります。また確定申告を行う必要もあります。
なお、この特例は住宅ローン減税と併せて使えます。この特例を使って税金を0にできている間は住宅ローン減税額も0になりますが、この特例が終了後は住宅ローン減税を受けることができます(売却損が大きい場合は4年目まで所得税は発生しないので、実質的に住宅ローン控除の適用は5年目からとなります)。
この「居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除」の特例はとてもありがたい制度ですが、「特例が使えるから買い替えをする」というのはあまりお勧めできません。住宅の買い替えに際しては、ライフプランを考慮し、子どもの教育費や老後資金の計画など将来のお金の計画をきちんと立てた上で検討するのが望ましいでしょう。