失敗事例 番外編(その3)
オーナー様がしがちな勘違い(失敗事例番外編 その3) |
ポータルサイトを見ると価格が安くて利回りが高い物件がたくさん載っています。ユーザーはそれだけ見ていれば、利回りが高い物件が優れているという錯覚に陥ることでしょう。アパートなどの1棟物件も1部屋あたりの家賃の金額が少なければ同じような状態です。
結論からいうと不動産投資における部屋あたりの賃料は、最低6万円以上の方が望ましいといえます。なぜなら、物件を管理するコストは部屋の家賃に関わらず、全国各地ほぼ一緒だからです。
毎月の家賃に対してかかるランニングコストの割合を私たちは「経費率」と呼んでおります。
分かりやすく説明しますと、仮に管理費と修繕積立金を合計して1万円だとすると、賃料が5万円の物件の建物維持の経費率は20%、賃料10万円では10%にとどまります。家賃が安くてもかかる費用は同じですから、家賃の安い方が経費の割合が高くなるという計算です。総合的に考えると、1部屋あたりの家賃が少ない物件は経費率が高いので不利です。
忘れてはならないのが、賃貸管理の手数料です。東京近郊が3%~5%の賃貸管理手数料の会社が多いのですが、地方の賃貸管理会社は管理手数料が5%の会社が多いようです。なぜなら、賃貸の管理を行うにも人件費がかかりますので、それなりの金額を収入としてもらえないと賃貸管理の会社がやっていけないからです。5万円の家賃で3%といったら約1500円です。1500円で人を雇って賃貸管理を対応するとしたら、やれることも限られてきます。一方、9万円の家賃で5%(4500円)の手数料の方がやれることが多くなりますので、賃貸管理のサービスとしては充実してきます。販売会社がそのまま賃貸管理をやる場合も、お付き合いするオーナー様のフォローということで管理手数料が3%の会社も多いようです。つまり建物を維持管理する場合、家賃が高いハイグレードの部屋の方が、賃貸管理会社も人を回せるので、オーナー様も安心できるサービスを受けられるということになります。
具体的な例を挙げます。
満室時の利回りが11.20%です。これからはじめる方はこうした物件に魅力を感じるかもしれません。しかし、この物件の経費率は35%にもなります。毎月の家賃の3分の1が経費として消えていきます。安いワンルームマンションには経費がかかるということは不動産投資に精通している方だとよく理解しています。もし、突発的な費用が次々にかかるようでしたら、収益を得ることもかなわないでしょう。
1戸当たりの家賃が低いと経費率は高くなります。そうすると当然、収益が取れません。そのことを理解しているから自分で壁紙を張り替えたり、掃除に行ったり家具を設置したりと、手間暇をかけているオーナー様が多いのでしょう。
賃貸が空いた場合にもコストはかかります。入居者を募集する際には、「広告費として家賃の1ヵ月分を下さい」というのが通常の賃貸管理契約のパターンです。家賃1ヵ月分の広告費をかけた入居者が2年間で退去した場合、家賃に対して月に4.16%の広告費がかかる計算です。加えて月々の手数料を5%としますと、2年間で毎月9.16%の実質的な賃貸管理手数料がかかることになります。
賃貸管理に9.16%の費用を考慮すると、その分、収益は厳しくなります。先程の毎月のランニングコストが35%の物件に賃貸管理手数料の9.16%を足しますと44.16%になります。つまり家賃のほぼ半分が維持管理コストに消えることになります。実際にはこうした費用がかかるので、見た目の利回りが良くても、実質的な費用を計算すると、利回りはかなり低下します。
つまり、地方の物件が安くて利回りが高いというのは維持管理コストが高いという理由があります。そのような理由があるから逆に言うと安くしないと売れないという価格設定がされているのです。そのことをよく知らないオーナー様が良く勘違いをする話として、自分の貯金の範囲で購入できる、価格の安い物件がいいと思っていることです。例えば、300万円という中古の物件があると、投資負担が低く安心だとオーナー様は判断をしてしまいます。
なぜ、こういった物件は安いのか?上記で説明した通りですが、入居者の立場にたって考えてみると築年数が20年を超えているとか、最寄り駅から遠いとか、住設備が一昔前のもので古いなど、さまざまな問題があり高い家賃を取ることができないのです。
利回りが高いということにはそれなりの理由があります。その理由を深読みして考えないと痛い目に遭うことになります。
入居者の立場から考えてもずっとその物件に住むよりはお金が貯まったらワンランク上の物件に住みたいと思うはずです。入居者がコロコロ変わるのもこのような理由があります。
逆に言うと、誰もが住みたい高いグレードの物件だとそこに住むことが快適なので入居期間が延びていきます。どちらにせよ、退去時の費用負担はオーナー様の責任になりますので、よく考えて投資していただければと思います。